異世界で逆ハーレムってアリなんですか?

 いつものようにベレルさんとセドリックさんがお茶を飲んで寛いでいた。
「ベレルさん、あの、仕事の事で相談があるのですが……」
 他にお客様もいなかったので、ベレルさんに思い切って相談することにした。
「困りごとかのう」
「いえ、困りごとというより、飲食スペースを少し広げようと。で、食器が足りないので、ベレルさんの処でもし扱っているなら買い取りできないかと思いまして」
 実はまだベレルさんの商会には顔を出せていない。だから取り扱っている商品もよく分からないので、聞いてみる事にした。
「そうかそうか。それならうちでも取り扱っているが、どうせなら安い方がいいのう。セドリック、メイナに工房を案内しなさい」
「え? わ、私が、ですか?」
 セドリックさんがいきなり振られて咽そうになった。
「そうだのう。明日メイナのお休みだから、お前さんが案内するといいのう」
 ベレルさんがいい亊思いついた、とでもいう顔で言った。
「でもご迷惑ではありませんか?」
 確かに私は明日休みだけど、セドリックさんは仕事よね?
「あ、いえ、迷惑だなんてとんでもない。喜んで案内させていただきますよ」
 セドリックさんの口元に笑みが見えた。

 翌日、セドリックさんが馬車で迎えに来てくれた。私達を乗せた馬車はとある工房の前で止まった。
「メイナさん、この工房は皿などの食器には定評があり、うちでも取引していて、腕のいい職人ですよ」
 セドリックさんが工房のドアを開けながら説明してくれた。
 中に入ると、色々なデザインの食器が売られていた。
「うわぁ、素敵!」
 シンプルな物から個性的で目を引くデザインなど様々な物が飾られていた。
「いらっしゃいませ。あ、セドリックさん、いつもご贔屓にどうもありがとうございます」
 奥から出てきた若い男性が頭を下げた。
「こちらこそいつもいい物をありがとうございます。今日はこちらのメイナ・カミナカさんの用事で来ました」
 セドリックさんが私を紹介してくれた。
「は、はい。只今工房長を呼んできます!」
 若い男性が慌てて工房の中に戻って行った。
 しばらくすると、奥から今度は年配の女性が出てきた。
「こんにちは、セドリック坊ちゃん」
 女性がニッコリ笑って言った。
「メリアナさん! 坊ちゃんはやめて下さいといつも言っているでしょう!」
 セドリックさんが慌てた様子でメリアナと呼ばれた女性に文句を言った。
「あらそう? で、こちらが今回の依頼主の方ね」
「あ、はい、メイナ・カミナカと申します。オアシスという店の店主です。店で使う食器を売っていただけないかと思いまして」
「工房長のメリアナです。そうですか。あなたが……。ではご希望のデザインとかおありですか?」
 メリアナさんは私を見て目を細めた。
「えっと、そうですね」
 辺りを見渡して、一枚の皿を指して言った。
「この皿のように平たいものから、少し深い物など形や大きさは色々な物が欲しいのです。基本は白色で、皿の後ろに緑の新芽のマークと店名を入れたいと思っています」
「大きさはその皿と同じ物以外だとどのぐらいかしら? 底が深い皿も大きさは色々必要かしら?」
「えっと、はい、大きさはこの皿とこの皿の三分の二ぐらいの大きさの物と半分の物と更に小さいこれくらいのサイズが欲しいです。深い物も同様です」
 両手でジェスチャーしながら答えた。
「三分の二って?」
 メリアナさんが首を傾げた。
 もしかしてこの世界では分数という概念がないのかしら? 何て説明したらいいのかなぁ?
「えーっと、あの、この皿より小さくて、半分よりは大きくて、という感じですかね?」
 何か余計分かりにくくなったかも?
「プッ!」
 セドリックさんが今笑った気がする。
「坊ちゃん、ちょっと失礼ですよ」
 メリアナさんがセドリックさんを窘めた。
「いや、だって――」
 口元押さえていたセドリックさんが言い訳しようとしたら、メリアナさんがセドリックさんをジト目で見ていた。
「すみません、メイナさん。疑問形だったのが可笑しくて、つい」
 セドリックさんが謝った。でも目がまだ笑っている気がする。
「いえ、自分でも変かなとは思ったので、気にしないで下さい」
 質問を疑問形で返すなんて変だもの。セドリックさんが吹いてしまっても仕方がないわ。普段はとても理知的で冷静に見えるセドリックさんだけど、実はとても笑い上戸ですものね。一見近寄りがたい印象だけど、笑っているのを見ると、壁がなくなって一気に親しみやすくなる感じがするわ。
「優しいお嬢さんで良かったですね、お坊ちゃん」
 メリアナさんがニヤニヤして言った。
「なッ! 何か勘違いしていませんか? そりゃあメイナさんは優しい女性ですがっ! 私とメイナさんはメリアナさんが邪推しているようなそういう関係ではなくて――」
 セドリックさんが顔を真っ赤にして、早口になった。
「フフフ。メイナさん、深い皿はどのぐらいの深さがいいかしら?」
 メリアナさんがセドリックさんをスルーして聞いてきた。
「えっと、そうですね、このぐらいあればいいかと」
 今度は指でジェスチャーして伝えた。
「分かりました。サンプルを作りますので、それで確認してもらうわ。その時にまた要望があれば言って下さいね」
 メリアナさんがにっこり営業スマイル。
「はい、是非お願いします」
 喜んで提案を受け入れた。
「では、商談もまとまったようですし、次に行きましょう」
 セドリックさんの表情がいつもより硬いような気がするのは気のせいかしら? それに耳が少し赤いような。
「はい、お願いします」
 メリアナさんの工房を出ると、次の目的地へ移動する為に、また馬車に乗った。
 馬車の中では少し気まずい空気が流れていた。
 さっき笑った事をまだセドリックさんは気にしているのかしら?
「あの、私、笑われたことなんて本当に気にしていないんですよ?」
 雰囲気を変えたくて、思い切って自分の気持ちを伝えてみた。
「え? あ、そ、そっち、いえ、何でもありません。メイナさんが気分を悪くされていないなら良かったです」
 セドリックさが安堵の表情を見せた。
「次はフォークやナイフなどの工房ですね」
 セドリックさんに行先を確認した。
「はい。他に必要な物があれば、そちらにもお連れしますよ」
「ありがとうございっ、むあっ」
 突然馬車が大きく揺れた。その拍子に体が大きく揺れて、横に座っていたセドリックさんの方に倒れそうになった。
「あっ!」
 セドリックさんの驚く声が聞こえたかと思ったら、彼の顔がすぐ近くに見えた。
 やっぱりイケメンよねぇ。驚いた顔ですらかっこいいもの。って、何かかなり顔近くないかしら?
「大丈夫ですか?」
 セドリックさんが心配そうな声が近くで聞こえた。
 え? ちょっとまって、この体制って、もしかして、私、セドリックさんに抱き止められてない?
「す、すみません!」
 慌てて体制を立て直して、座り直した。
「おケガはないですか?」
「は、はい、だ、大丈夫です!」
 顔が真っ赤になっているのが自分でも分かった。恥ずかしい。
「それなら良かった」
「セドリックさんは大丈夫でしたか? その、私ぶつかっってしまったような――」
「いえ、大丈夫ですよ」
 セドリックさんが笑顔で答えた。
 本当に大丈夫そうだ。
 それにしても、セドリックさんはカイト様やレスト様に比べて体の線が細いと思っていたけど、やっぱり男の人なんだなぁ。さっき受け止めてもらった時、腕に力強さを感じたわ。
 チラッとセドリックさんを盗み見た。
 そう、あの腕と胸に抱き止められたのよね。って、何反芻しているのよ、私ったら。思い出しちゃったじゃない! 忘れなきゃ。だって恥ずかしくて普通に話せなくなったら困るから!
 一生懸命別の事を考えようとしたけど、しばらくはダメっぽい。
 私が恥ずかしさに身悶えている時、セドリックさんの耳が赤くなっているのには気が付かなかった。

読んでいただきありがとうございました。
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青猫かいり

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