異世界で逆ハーレムってアリなんですか?

 ついにお店のオープンの日がやってきた。
 飾りつけOK、商品陳列OK、門の看板OK、全ての準備が整った。
「広告とかもないし、お客様来るのかなぁ」
 一抹の不安を覚えたが、今更仕方がない。
 商業ギルトに開店の報告と掲示板に宣伝のチラシを貼ってもらって、思いついたことはやったつもり。
 開店は十時からと決めていたけど、まだ早すぎるので、庭に出た。
 先日素材屋さんで仕入れてすぐに庭の畑に種を撒いたので、その手入れをすることにした。
 あれ? 芽が出ていたのは知っていたけど、もうかなり育っているわ。思ったより随分育つのが早いみたい! 
 こっちの世界では当たり前なのかな?
 種は野菜やハーブや薬草、果物など色々な物を区画を分けて植えておいた。広大な敷地だから、それでもまだたくさん植えれそうだけど。
 満遍なく水やりして一息ついた。
 前の住人が茶の木を育てていたらしく、茶畑がそのまま残っていた。これなら緑茶も紅茶も作れるからラッキーだったわ。
 ちょうど新芽が出ていたので、緑茶用にと全ての新芽を昨日摘み取っておいたのよね。
 魔法で乾燥させておいたから、今日お客様に出してみようかな。
「おはよう、メイナ。ちょっと早く来すぎてしまったかのう」
 ベレルさんが門から入ってきて、声をかけた。
「おはようございます! 大丈夫ですよ。開店準備は終わっていますから、どうぞ」
 ベレルさんを伴って、店の中に戻った。
「ほう。中々いい雰囲気のお店だのう。これは薬だね。色々な種類があるのう。――ん? メイナ、こ、これは!」
 ベレルさんが薬棚を見て驚いた声を出したかと思うと、至近距離で凝視していた。
「どうかしましたか?」
「――これらは全てメイナが作ったのかの?」
 ベレルさんが真面目な顔でメイナを見て尋ねた。
「はい、そうですけど……」
 そう言うと、ベレルさんは目を見開いた。
「メイナ、悪いことは言わん。薬は商品棚に並べない方がいいのう」
 ベレルさんは真剣な表情だった。
「え? ダメですか?」
「そうだのう。薬はただでさえ高価な物だから、盗難の心配もあるしのう。ここにある薬の三分の一は滅多にお目にかかれない薬ばかりだしのう。用心するに越したことはないのう」
 ベレルさんが心配そうに言った。
「分かりました。じゃあ薬は、必要な薬を伺ってから渡すことにしますね」
 そう言いながら、薬を全て棚から回収した。
 空になった棚には、並べきれなかった別の商品を並べ、値札も入れ替えた。
「それにしても、全体的に少し安いが、貴重な薬の価格が安すぎではないかのう」
「そうですか? 相場が分からない物は、これでも材料費と儲けを考えて設定したつもりだったのですが」
 薬の一覧と価格表をベレルさんに見せながら言った。
「うちの商会でも薬を取り扱ってはいるが、それよりも少し安いくらいだのう。まぁそれはいいとして、半数はうちでも取り扱いが難しい薬だから相場は分からんが、んー、取り扱うにもこの値段では売れないものばかりだのう」
 ベレルさんが唸りながら言った。
「でもこの店に貴族の方達は来ないと思うので、庶民の方に大勢来てもらうなら、価格は安い方がいいかと思いまして」
「そうか。メイナは優しい子だのう。だが、商売をする上では、優しさに付け込まれることもあるしのう。充分気を付けなさるがいいのう」
 ベレルさんがやんわりと忠告してくれた。
 価格表は表に出さない方がいいのかもしれない。
「分かりました。色々と助言ありがとうございます。時間はまだありますか? 今、お茶をお持ちしますので、椅子に座って待っていてもらえませんか」
 テーブルセットの椅子に座るように促した。
「今日は暇だしのう。お言葉に甘えさせてもらうかのう」
 ベレルさんがそう言って椅子に座ったのを見届けてから、台所に行った。
 水道の水より魔力で生成した水の方が美味しいのが分かってからは、飲み水は全て魔力を利用している。
 自分で作った葉っぱを使った緑茶と自作の水羊羹とフルーツあんみつをお茶請けに準備し、自分の飲み物も用意するとお店に戻った。
「お口に合うかは分かりませんが、良かったらどうぞ」
 緊張しながらベレルさんの前に緑茶と水羊羹を置いた。
「ありがとう。いただくとするかのう」
 ベレルさんは珍しそうにお茶と水羊羹をじっと見ながら、まずは水羊羹を口に運んだ。
「甘くてうまいのう! 初めての味だのう。これは何という食べ物かのう」
 ベレルさんは驚きながらも美味しそうな顔をして食べた。
「これは水羊羹というお菓子です。あと飲み物は緑茶といいます。少し苦味を感じるかもしれませんが、この水羊羹に合うと思いますよ」
 説明してお茶も勧めた。
 ベレルさんは水羊羹を食べる手を止めて、緑茶に手を伸ばした。
 一口すすると、ほっこりした顔になった。
「これも初めての味わいだのう。甘みもあるが確かにほのかな苦みが水羊羹とやらによく合うのう。これもメイナが作ったのか?」
「はい。この店の商品もお出ししている物も全て手作りです」
 私はにっこり笑って言った。
「ほう。それはすごいのう。薬は勿論、他の商品も見たことがないものも多い。それに、メイナの飲み物もこっちのお茶請けも見たことがないのう」
 ベレルさんが不思議な物を見るような目で見ていた。
「これは、レモネードという飲み物です。あとこちらのお茶請けは、フルーツあんみつといいます。こちらも是非味見してください」
「ありがとう。こちらも頂くとするかのう」
 ベレルさんは興味深々にフルーツあんみつに手を伸ばした。
「うまいのう! 優しい甘みでこれもこの緑茶とやらに良く合いそうだのう」
 ベレルさんは満足そうに笑みをこぼした。
「お口に合ったのなら良かったです。これで自信もってお店に出せます」
 この世界の住人の口に合うかどうか心配だったから、これで安心だわ。
 やっと緊張が解けて安堵した。
「まだ言ってなかったのう。開店おめでとう」
「ありがとうございます。頑張ります」
 ベレルさんが自分の事のように喜んでくれているような気がした。
「メイナ! 開店おめでとう!」
 お店のドアを開けてカイト様が入って言った。
「ありがとうございます。来てくれたのですね。嬉しいです」
 私は笑顔で応えた。
「あれ? ダムラトリーさん? 何だ、一番乗りじゃなかったか……」
 驚いた顔をしたと思ったら、今度はしょげたような顔をした。
「これはこれはアクフェルト様、メイナとお知り合いだったのですのう」
 ベレルさんがニッコリ笑って言った。
 カイト様は苦笑いしていた。
「お二人はお知り合いだったのですか? カイト様には危ないところを助けてもらって、色々とお世話になりました。ベレルさんにもこの国に来る前からお世話になりっぱなしで」
「メイナのことはわしの孫娘同然と思っておりますのう」
 ベレルさんがカイト様にニッコリ笑っていった。
 ベレルさんの笑顔がコワイ気がするのは気のせいかな?
「あの、カイト様も良かったら、お座りになりませんか?」
 カイト様に座るように勧めた。
「では遠慮なく。少し休ませてもらうとしよう」
 カイト様がベレルさんの斜め向かい、つまり私の横の椅子に座った。
「お飲み物をお持ちしますので、少しお待ちください」
 そう言って私は席を立った。
 台所でお茶とお茶請けを準備して戻ってきたら、カイト様とベレルさんは何かお話しをしていた。
 私が戻ってきたのに気が付くと、二人は話を急に中断した。
「お口に合えばよいのですが」
 カイト様には果実をたっぷり入れたフルーツティとクッキーを持ってきた。
「ありがたくいただくとしよう」
 カイト様がフルーツティを一口飲んだ。
「うまい! これは紅茶か?」
「はいそうです。紅茶に生の果実を入れたフルーツティです」
 カイト様は次にクッキーを一つ手に取って食べた。
「これもうまい! これはお菓子か?」
 カイト様が勢い良く交互に食べて飲んで、と繰り返した。
「はい。クッキーという焼き菓子です。お口にあったのなら良かったです」
 カイト様にも喜んでもらえて良かった。
 安堵して私も飲みかけのレモネードを飲み干した。
「すみません!」
 勢いよく店のドアが開いたかと思ったら、騎士服の男の人が一人飛び込んできた。
 よく見ると擦り傷だらけで泣きそうな顔をしていた。
「いらっしゃいませ。傷薬をお買い求めですか?」
 立ち上がって騎士に近づいて尋ねた。
「僕じゃないんです! 先輩が、僕のせいでっ、とにかく一緒に来てもらえますか?」
 男性は言いながら私の腕を掴むと、お店のドアを開けて勢いよく走り出した。
「あ! ――おい!」
 後ろからカイト様の声が聞こえた。
「え? ちょっ、ちょっと」
 何度もこけそうになりながら、取り敢えず引っ張られるまま走った。
 連れられた場所は隣の敷地の王都第三警備団の詰所だった。
 正式には王都第二騎士団第三警備団らしい。
 医務室のベッドに男性が横になりぐったりしていた。
「何とか助ける薬はありませんか! お願いです! 先輩を助けてください!」
 私を引っ張ってきた男性が私に縋りついた。
「傷の具合を見せて下さい!」
 患者さんに近づいて傷口を見た。
 お腹が深く抉られていて、多量の血を流して気絶していた。
「んっ!」
 むせ返るような血の匂いに一瞬気が遠くなりそうだった。
「これは酷い! 獣の爪で抉られたか!」
 後ろからカイト様の声で、気を取り直した。
 どうやら追っかけてきたらしい。
 カイト様が重症の男性に近づき、呼吸を確かめた。
「虫の息だ……この傷では――」
 カイト様が静かに首を横に振った。
「うわぁ! 先輩! 僕を助けたばっかりに、僕のせいで!」
 その様子を見て、私を連れてきた男性は泣き崩れ落ちた。患者さんの周りで必死に声をかけていた他の騎士さん達も絶望した顔で泣き叫び出した。
「出血も多いし内臓も損傷しておる!」
 いつも間にか来ていたベレルさんが患者さんを診て言った。
 このまま何もしなかったら、この人は死んでしまうってこと?
 私に出来ることは、治癒魔法を使うか、薬を飲ませることだけ。でも治癒魔法で重症者を治せるか分からない。
 時間がない。
意を決して、アイテムボックスからまず傷薬を取り出した。
「まだ間に合うかもしれません! まずはこれを何とか飲ませて下さい!」
 いつもより強めの声で、崩れ落ちていた騎士さんに言った。
騎士さんが弾かれたように顔を上げて私と薬瓶を見た。
「は、はい!」
 騎士さんが涙を裾で拭って傷薬を奪い取るかのように受け取った。
 私はもう一つ傷薬を取り出し、急いでお腹に直接かけた。
 これで治って!
「あっ! 傷が治っていく!」
 騎士さんが驚いた声を上げた。
 他の騎士さん達も驚いて口々に何か言っていた。
 騎士さんが何とか飲ませたらしく、中からも外からも傷がみるみる治っていった。
 しかし、患者は顔色が悪いまま、まだ意識を取り戻さない。
「先輩! 傷は治ったのに、何で目を覚まさないですか!」
 騎士さんが患者さんに縋りついた。
 何故? 傷は完全に塞がったのに⁉
 慌てて患者さんのステータスを覗いた。
 【感染症あり。出血多量。肺に腫瘍あり。右目失明】と書かれていた。
それに体力の数値が二まで削られていた。
 個々に症状を回復している時間はない。
 私は全回復と全治癒の薬をアイテムボックスから取り出した。
「騎士さん! 急いでこの二つの薬を飲ませて下さい」
 騎士さんはこくりと頷くと、二つの薬を受け取り、患者さんに飲ませた。
 お願い! 死なないで!
 私は両手を組んで祈った。
 薬の効果が現れたのか、顔色が良くなってきた。
 患者さんがゆっくりと目を覚ましたかと思ったら、ガバっと起き上がった。
「先輩!」
「俺、生きているのか?」
 元患者の男性がビックリして言った。
 良かった! 間に合った! 生きていて良かった!
 安堵した瞬間、力が抜けてその場に崩れ落ちた。
「大丈夫か⁉」
「あ、はい、ちょっと気が抜けてしまって」
 カイト様が私を立ち上がらせてくれた。
「このお嬢さんの薬で治してもらったんですよ! 先輩からもお礼言って下さい」
 騎士さんが私をちらっと見て言った。
「あ、ありがとう! お嬢さんのお陰で助かった!」
「ホントに、間に合って良かったです」
 騎士さんだけでなく周りの騎士さん達も涙ぐんでいて、私もつられて涙が出そうになった。
「――右目が! 胸も苦しくない! 力が漲っている! 一体これは――」
 元患者さんが更に驚いて、ベッドから降りて私に詰め寄った。
「肺癌と右目の失明はついでに治しておきました。危険でしたので、体力も回復させました」
「え? 何で分かった? 薬はどのような物を?」
「えーと、傷薬二本と全回復の薬と全治癒の薬を一本ずつ使いました」
 私は正確に答えた。
 元患者さんが騎士さんを見た。
 騎士さんが転がっている四本の薬瓶に視線を這わせて頷いた。
「お嬢さん、助けてもらって感謝はしている。けど、いくらかは分からないが、幻の薬二本分の代金なんて、今すぐには払えないだろう。必ず全額払うから、分割にしてもらえないだろうか?」
 元患者さんが深く頭を下げた。
「先輩! 僕のせいなんだから、僕もお金出させて下さい!」
 騎士さん達が口々にお金を出すと言った。
「あのー、代金は全部で白金貨一枚と銀貨三枚になります。勿論、分割でも大丈夫です」
 申し訳ない気持ちで言った。
 勝手に使って十万三千円ぐらいのお金を支払わせるのだもの、文句言われても仕方がないわ。
 恐る恐る元患者さんと騎士さん達を見ると、全員があんぐり口を開けていた。
 カイト様を見ると、驚いたのか、目が見開いて固まっていた。
「えっと、高かったですか? 今日からオープンなので、価格を変えましょうか? あ、何ならオープン記念で格別に値引きしますけど、どうでしょうか?」
 ちらっと周りの反応を見ながら小さい声で言った。
「いやいや、むしろ安すぎでしょ? お嬢さん、それじゃあ赤字じゃないの?」
 騎士さんがツッコミ入れてきた。
 元患者さんも頷いている。
「ちゃんと儲けはありますよ? 手作りですから、ぼったくりって言われても文句は言えないぐらいです」
 ドヤ顔で言い切った。
「ぷっ」
 カイト様が噴出した。
 それを合図に、元患者さんや周りの騎士さん達も笑いだした。
 あれ? そんなに面白いこと言ったかな?
 きょとんとしてしまった。
「あの、もしかして、第一騎士団団長のアクフェルト様ではないですか」
 元患者さんが改まってカイト様に話しかけた。
 そのセリフに周りの騎士さん達がシーンとなった。
「そうだ。勝手に上がり込んでしまってすまない。丁度メイナのお店に来ていたところでな」
 カイト様がベレルさんを紹介した。
 この部屋にいる私とカイト様とベレルさんを除いた全員がカイト様に向かって、右手を左胸に当て、軽く会釈するポーズを取った。この国での敬礼みたいだった。
「今日は非番だ。皆楽にしてくれ。こちらの御仁は騎士団がお世話になっているダムラトトリー商会の会頭さんだからな。失礼のないように」
「は!」
 騎士さん達は返事をした後、少し緊張を解いたようだった。
 カイト様は騎士団の中でも偉い人相当偉い人だったのかな? それにベレルさんも騎士団とつながりがあるみたい。
「わしもメイナのお店を訪れていてましてのう。そこの騎士さんの様子から只事ではないとお思い馳せ参じたのですが、役に立ちませんでしたのう」
 ベレルさんが苦笑いして言った。
「おい、ナッケル、どこからこのお嬢さんを連れてきたんだ? お二方と知り合いで幻の薬を作れるなんて只者じゃあねぇぜ」
 元患者さんがナッケルと呼ばれた騎士さんに尋ねた。
「いや、その、隣の敷地にある『オアシス』というお店のお嬢さんですよ。薬とか色々取り扱うお店が今日からオープンするっていう話を聞いていたんで、もしかしたら助けてくれるかもって、必死だったんですから!」
 ナッケルさんが言い訳するかのように言った。
「まぁ、それはありがとよ。お前、擦り傷だらけだからお嬢さんに治してもらったらどうだ?」
 元患者さんがにやついて言った。
「いや、こんなの全然痛くないですから。――痛っ! オセトル先輩、何するんですか!」
 ナッケルさんが元患者さんのオセルさんに擦り傷と触られて顔を歪ませた。
「ほら、俺の女神、じゃなかった、命の恩人の営業に協力しろよ」
 オセトルさんがナッケルさんの肘をつついて言った。
「えっと、僕はナッケルといいます。改めてオセトル先輩を助けていただいてありがとうございました。傷薬を一本売ってもらえませんか?」
 ナッケルさんが私に話しかけた。
 傷薬をナッケルさんに渡した。
「はい。喜んで! お代は銀貨一枚と銅貨五枚になります。――申し遅れました。私、メイナ・カミナカと申します。今後も宜しくお願いします」
 軽く頭を下げて自分の紹介をした。
 ナッケルさんからお代を頂いた。
「俺はオセトル。助けてくれて本当にありがとう。代金用意できたから渡しておくよ」
 オセトルさんからもお代を受け取った。
「はい、確かに頂きました」
 受け取ると、こっそりしまった。
「メイナのお店はダムラトリー商会とは関係ないのですが、孫娘のように思っております。わしからもお願いしますのう」
 ベレルさんがにこやかに言った。
「今日ご馳走になったお菓子や紅茶はとても美味しかった。お店に戻ったら、代金を支払おう」
 カイト様が言った。
「いえ、あれは商品ではないです。お二人には色々とお世話になりましたから、そのお礼のつもりだったんです」
「それは勿体ないのう。あれだけの味なら試食や試飲は少量にして、商品化した方がよいのう。飲食スペース広げて売るのはどうかのう」
 ベレルさんが提案をしてきた。
 お店に置いてあるお菓子などの商品がこの世界にない物だったら、試食してもらわないと買ってもらえないかと思って考えたサービスなんだけど。思わぬ好評で嬉しい限りだわ。
 流石、ベレルさんは商人だわ。
「参考になります。検討してみます。ベレルさんのお店にも今度伺わせてもらいますね。場所はまだ知らないので、後で教えて下さいね」
 一度ベレルさんのお店にも行ってみたいから、お願いしてみた。
「え? メイナさん、あのダムラトリー商会を知らないのか? 今度俺が連れてってあげようか?」
 オセトルさんが私の手を両手で握りながら言った。
「有名なのですか? 知らないので――」
「いや、それには及ばない。貴君のお手を煩わせることもない。メイナ、良ければ俺が案内するからな」
 カイト様が私の言葉を遮って、オセトルさんの手を私の手から外しながら言った。
「いやいや、アクフェルト様の手を煩わせることもないですのう。ワシが連れて行くのが一番ええですのう」
 ベレルさんがやんわりとカイト様の申し出を断った。
 ベレルさんはともかく、他の方はダムラトリー商会に用事でもあってついでに案内してくれようとしていたのかな? でもお店もあるしすぐには行けないだろうから、案内はまた今度の方が良さそうだわ。
「みなさん、お気遣いありがとうございます。お店があるので、いつ行けるか分かりませんので、機会があればお願いしますね」
 私はにっこり笑って言った。
「メイナ、そろそろお店に戻ろうか」
 カイト様が声をかけてきた。
「そうですね。皆さん、お邪魔しました。お隣のよしみで、宜しくお願いします」
 これでお客様が増えてくれればいいのだけどなぁ。
 軽くお辞儀をして詰所を後にした。

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