それからというもの、有田は毎日麗美に逢いに行った。勿論、最初の頃は営業のためという気持ちが半分はあった。
だが、回数を重ねるごとに、その気持ちも薄れていった。麗美に契約する気がないからというより、有田自身がただ麗美に逢いたいと思うようになったからだった。営業のためというのは口実にしか過ぎなかった。
麗美の元へ通っている間に、梅雨時期の到来となった。じめじめとした蒸し暑さが嫌になる。
今日は朝から曇り空で、雨が降るのかわからない空模様である。
有田はいつものように麗美の家へと向かった。近くまでくると、突然雨が勢いよく降り出した。
普段なら、鞄に折りたたみ傘を忍ばせているのだが、今日に限って忘れていた。
激しい雨に打たれながら、麗美の家へと走った。彼女の家の裏門までたどり着いた頃には、全身びしょ濡れとなっていた。
初めの頃は、正門まで回っていたのだが、最近では裏門から入るのが暗黙の了解となっていた。
裏門から入った有田は、麗美の部屋の前へ行こうとしてそこに人影を見つけた。
麗美が雨の中、傘も差さずに庭の薔薇を眺めるようにして立っていた。
「麗美、さん?」
有田が訝しげに声を掛けた。麗美が顔を上げ、有田の方を見た。いつからそこに居たのか彼女も有田同様にびしょ濡れだった。
有田は麗美に近寄ると、
「風邪を引きますから、中に入りましょう」と、彼女の肩を抱いて部屋の中へ入るように促した。麗美は促されるままに部屋の中へ入り、有田も少し遅れて彼女の部屋に入った。
何故雨が降ってきたのに、部屋の中に入らずに庭に立って雨に打たれていたのかと、麗美に尋ねたい心境だった。
しかし、有田の口から出たのは、別の質問だった。
「誠之助さんはいないのですか?」
「――ええ、用事で外に出ています。夕方には戻ると思います」
「そうですか……」
有田は珍しい事だと思った。有田が尋ねてくる時、誠之助は大抵居るし、居ない時でもすぐに戻ってきていた。
今、この広屋敷の中で麗美と二人きりだと思うと、有田は妙な気分だった。
改めて麗美を見た。結い上げた髪から雫が彼女の首を伝い、鎖骨へとこぼれた。濡れた浴衣が彼女の体にぴったりと吸い付き、肌が透けて見える。
有田の目は透けて見える豊満な麗美の乳房に釘付けだった。
このままでは二人とも風邪を引きかねない。そう思いつつも、有田は彼女から目が離せず、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
この部屋に麗美と二人きりなのだ。
「ふふ。二人とも濡れ鼠ね」
麗美が有田を見て妖艶に微笑んだ。
頭の中で何かが切れる音がした。それは、理性という名の神経の糸だったのかもしれない。
有田は麗美に近づくと、いきなり強く抱き締め、その場に押し倒した。
荒々しく麗美の首筋に口付けながら、彼女の浴衣の中に右手を入れ、柔らかな乳房をまさぐった。
麗美は抵抗しない。それどころか、彼女の腕は、有田の首に巻きついていた。
そのことに気が付くこともなく、彼女が抵抗しないことを疑問に思ってもいなかった。勿論、前々から麗美が自分のことを好いてくれていると思っていたわけでもない。ただ、興奮していてそのことにまで頭が回らなかっただけなのだ。
有田はまるで獣のように荒い呼吸を繰り返し、行為はエスカレートさせていく。
唇を首筋から胸へと滑らせてゆくと同時に、右手は乳房から離れて下へと動いていく。左手も乳房を捕らえて離さない。体を麗美の足の間へと割り込ませると、右手の指が太ももを撫で上げ、柔らかな足の付け根の間、中心をまさぐる。
「あっ……」
麗美の口から甘い吐息が漏れた。
尚も激しく、乳房や敏感な部分を愛撫した。
有田は欲望のままに彼女を貪った。
麗美は有田の背中に手を回し、悩ましげな表情の合間に、妖艶な微笑をちらつかせていた。
昂ぶり、彼女との行為に夢中で、有田は彼女の表情には気が付かなかった。
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