勇者の血脈~始祖は伝説の迷い人~

 今から三千年程前、このオリンヴァラと呼ばれる世界ではヒト族(人間)、魔人族、エルフ族や獣人族や魔族他、様々な種族が住んでおり、種族間の争いが絶えなかった。また種族によっては、種族内での争いも絶えず、世界は混沌としていた。
中でもヒト族は他種族に比べ魔力や身体能力が劣っているが、剣術と魔法を智略で駆使し、他種族からの侵略を防いでいた。
ヒト族の中にも大小様々な国や国に属さない領地もあり、領地や資源などを巡り、ヒト族同士の争いも絶えなかった。時折神や精霊の加護を受ける者が生まれ、その者を巡り争いが起こることもあった。
ある時、ヒト族のユグリアス地方に異世界から迷い人(異世界人)が現れた。その者は地球という星に住み日本という国で生まれた人間だった。
 彼は育った環境により、剣術に優れ、ヒト族と思えない程の体術を身につけていた。また、異世界からこの世界に渡る際に神々の加護を受け、あらゆる魔法を駆使することができた。それゆえ、最強の勇者と呼ばれた。
 彼が現れた地方のヒト族の領主は彼の手助けにより、ユグリアス王国を建国し、初代の王となった。
 ユグリアス王と勇者により、他種族や他の地域のヒト族とも和平を結び、殺伐とした世界に平和が訪れた。
 彼は初代ユグリアス王の娘と恋に落ち、結婚して公爵の身分と辺境の地を与えられ、領主となった。
 彼は異世界に帰ることもなく、辺境の地、アカツキ領と名付けられた領地で生涯を終えた。
 三千年の時を経て、史実は伝説となり、神話となり、やがて彼という最強の迷い人がいたということすら建国創造の空想物語として、人々から忘れられていった。
 年月が経つにつれ、他種族や国内の情勢も変化し、今にも平和が侵され、再び混沌とした世界に戻ろうとしていた。
 この状況を憂いたオリンヴァラ世界の神々の導きであろうか、アカツキ領にて一つの希望が生まれた。かつての最強の迷い人、伝説の勇者の子孫でもある領主に、始祖返り(先祖返り)の男児が誕生したのだ。
 その赤子はレオンハルトと名付けられた。
 レオンハルト・アカツキ。
 この者は勇者の血脈により、偶然のようで必然ともいえる稀有な人生を歩むことになるだろう。それはもはや宿命とも呼べる数奇な運命を背負わされたと言っても過言ではない。
 ――願わくば、レオンハルトに神々のご加護があらんことを。

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青猫かいり

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